たの葉の物思い 

本を読んで、たの葉が思ったことです、ときどき、それ以外

講談社学術文庫「魏晋南北朝」

著・川勝義雄

 中国の歴史は、皇帝が専制的になっていく、太祖趙匡胤が起こした宋以降が好き。宦官に振り回されて泣くような皇帝は好みではないの。だけど。中国の六朝文化が日本の貴族文化に影響を与えたと知り、もともと日本の貴族が好きなわたしは、六朝魏晋南北朝時代についても読まなければと。このシリーズ、「モンゴルと大明帝国」から、なぜか時代をさかのぼって読んでいる。

 華やかな暗黒時代? 気をそそられた。中国文明の拡散期? 重要な時代じゃないか。

 「清議」が文人貴族につながるのか。知識階級の始まりと変容。

 多くの人々がなぜ宗教を必要としたのかがわかった。

 地理的生態学的に見た北の地域と南の地域の違い。わたしは三国志には興味がないのだが、魏と呉の違いが、興味深い。王導の知略も最期も、みごとだ。桓温の軍隊を見た関中の漢人たちが感泣したというエピソード、漢人たちの絆を感じる。

 宋と南斉の、王室内の惨劇の繰り返し。怖い、だけど、こういうの、大好きです…。

 文人貴族の心意気には魅力を感じるが、寒門出身の軍人たちが台頭すると、わくわくする。やはり下剋上は面白いなあ。

  隋の煬帝が魅せられた江南の花は、盛時の大輪の花ではなく、かよわい小さな花だったのか…。

  華北。 五胡という異民族がなにものかきちんとわかって、頭の中がすっきりした。北魏。崔浩が江南の貴族社会と文明に憧れていたってエピソードに微笑ましさを感じたのに、最期は処刑されたのか…。孝文帝の洛陽遷都の強行、すてき。胡漢の融合の深化。

 「顔氏家訓」、ほんの少し、ほんの少しの部分を読んだだけなのに、感慨深い。

 確かに、華やかな暗黒時代。大混乱の戦乱の時代、だけど、文化文明は存続し得た。大混乱の戦乱の時代の知識人と文人貴族。その強さ。「おわりに」の、「いわゆる「民衆」の大多数が、武人ではなくて文人ないし知識人のほうを、かれらの指導者として選んだと解さなくては理解できないのである」という文章に、考えさせられた。

 それにしても、皇帝の権力が強大になって安定してくれないと、読むのが大変…。皇帝の力が不安定だったり、すぐ取って代わられたりすると、政局がいっそう複雑になる。五代十国時代も、政権の交代が頻繁で人間関係が複雑で、理解するのが難しいし。