たの葉の物思い 

たの葉が思ったことです、主に本を読んだ感想、ときどき、それ以外

「それから」「門」 著・夏目漱石

新潮文庫

 強迫神経的なわたしは、決められた順序どおりにしないと、すべて揃えないと、落ち着かない。だから「三四郎」の次は、近所の書店で買ってきた「虞美人草」を読むつもりだったのに。遠くの書店まで行き「それから」と「門」を購入。

 現代になってくれてよかったと思った。時代が進み、社会が変わって、よかった。現在も、不貞行為は違法だし、離婚は合法だけど悪だと非難され、悲しみと苦しみを、不幸を、生み出すけれど、この時代ほどに、重い十字架ではないだろう。生活や人生の一つの選択肢といえるだろう。

 この時代の生活風俗がいいなあとしみじみしていたが、気付いた。これは、わたしの好きな時代ではないか。漫画家を目指していたころ、わたしが描いていたのは、明治・大正時代を舞台にした物語ばかりだった。この時代の資料もいろいろ持っている。夏目漱石の生きた時代、小説に書かれている時代って、わたしが好きな時代だったんだ。

 「それから」。代助、始めのうちは、いろいろ考えるだけの気楽な男で、いろいろ考える面倒な男、と思った。やがて、考えながら、動き始めた姿に、頑張って、進んで、そちらの道のほうが好きよ、わたしは、と、無責任に思った。三千代と、平岡と、必死に話し、表に飛び出す姿に、ただ、幸せな未来を願った。三千代の激しさに驚いたし、三千代の覚悟に、感動した。

 「門」。現代に生きているわたし。宗助と御米へ。話すべきことは、話さないと。それは、話し合うべきことです。率直に、自分をさらけ出さないと。この先もずっと一緒にいたいのなら。一人で抱え込んでいてはだめ。現在の安井が不幸だとしても、それはもうあなたたちの責任ではないのよ。もう、自分を、自分たちを、許してあげたらどう?って、思ってしまうけれども、そうしたら、宗助と御米が作っている、あたたかくはかない、二人だけの世界が、深くも切ない、二人のこの睦まじさが、壊れるね、変わってしまうね…。宗教より、まず、カウンセリングを試してみたら、なんて。現代の、価値観と技術と手段で、精神的な心理的な問題を解決しようとしたら、小説にはなりませんね…。